「ほんっと、副長も無茶ばっかり言って…!俺の身にもなってほしいですよォォ!!」

「お疲れ様です、山崎さん…!」

現在、俺、山崎退はファミレスでさんに愚痴…いや、話を聞いてもらっています。

 

 

「休憩時間くらい、ミントンしたっていいと思いません!?」

「もっちろんっ!休憩時間をどう使うかは本人の自由ですもん!」

「それに…昨日やっと張り込み任務から帰ってきたっていうのに、今日は見回りって…俺の休みはいつなんだぁぁ!」

「労働法に逆らってますよねそれ!局長さんにお休み頼んでみたらどうですか?」

あ、そっか。局長……今、多分お妙さんのところにでも行ってるんだろうなあ。

 

 

こんな俺のどうしようもない愚痴に付き合ってくれるさんは、本当に優しい人だと思う。

いっそ真選組で働いてくれたらいいのに。そしたら一緒にミントンできるのになあ。

 

 

 

 

「ってそろそろ時間ヤバいんじゃない!?」

「あ。ほんとですね。そろそろ帰らないと…」

時計の針はもう6時。門限とまではいかないだろうけど、あの過保護な旦那のことだからなあ。

 

「あの、今日、話聞いてくれたお礼に家…っていうか万事屋まで送るよ」

伝票を持って席を立つ。

「いいんですか?山崎さんお仕事あるんじゃ…」

「大丈夫ですよ。どうせ通り道ですし」

そう言って笑うと、さんも「じゃあ、お願いします」と笑った。

 

 

 

 

 

 

ファミレスを出て数分。万事屋の前に到着した。

 

「じゃあ、山崎さん。今日はありがとうございました」

「ううん!俺のほうこそ、本当にありが…」

そこまで言ったところで、目の前のスナックの玄関が飛び、俺に激突した。

 

「ぶっふあっ!!」

「テメェェェ!俺のがなかなか帰ってこねぇと思ったら、お前が連れまわしてたのかこのジミーが!」

 

バキャアアンという音とともに、なぜかスナックから万事屋の旦那が飛び掛ってきた。

 

 

「ごふっ…つ、つれまわしてたわけじゃ…」

「じゃあ何で一緒にここまで来てんだアァン?連れまわしてた以外の何があるっつーんだコラァァ!」

ガッと俺の胸倉を掴みあげてがくがくと前後に揺さぶられる。

 

過保護だった!恐ろしいほどに過保護だった!

そして今日は一段と怖いんですけど!どうしちゃったんですか万事屋の旦那ァァ!

 

 

「銀ちゃん!山崎さんは、夕暮れは危ないから、ってわざわざ送ってくれたんだよ!」

がしっと旦那の腕を掴んで言うさん。

あああ、嬉しいけど!ありがたいけど、今は逃げたほうがいいと思いますさああん!

 

 

「………門限から18分オーバーしてんだぞ。ちゃんと帰って来ないと心配するだろーがよ」

 

 

そう言って、俺から手を離してさんのおでこに軽くデコピンを一発。

重力にひっぱられてべしゃっと地面に落ちた俺とは大分ダメージに差があるんですけど。

 

 

「っていうかそれだけぇええええ!?」

 

えええ、何その注意!軽っ!

それに門限早いな!6時って、子供でも夏場は遊んでる時間なんだけど!!

 

 

 

「当たり前だろ。可愛い可愛いに、厳しくとか無理無理」

「外で可愛いとか言うのやめてね銀ちゃん」

「…はい」

 

さんのほうが厳しかった。

声は柔らかくても顔が笑ってなかった!マジ顔で言い放った!

 

 

「とにかく!門限のことは謝るけど、私が山崎さん引き止めたっていうのもあるんだから、そんなに怒らないであげてよ」

ビシッとそう言われると、旦那もうぐぐ、と唸って一息ついた。

 

 

「…仕方ねえな…」

呆然と2人のやりとりを見てた俺がようやく起き上がった時は、もう旦那はいつもの死んだ魚の目に戻っていた。

 

「おいこのジミー。次を連れまわしたらミントンラケットへし折ってやるからな」

「すいまっせんもうしません」

それよりそのジミーってのやめてほしいんですけどね!地味からきてんのかそれ!

 

 

 

まあそれはおいといて…もうしない、とは言ったものの。

またさんとお茶したいっていう気持ちはもちろんあるわけで。

 

ちらりとさんに視線を向けると、口パクで「また今度」と言っていた。

よかった、なんて思ってへらりとつい笑ってしまった。

 

 

「なに笑ってんだよ。反省してんのかァ?」

「しっ、してますしてます!すいませんでした!」

ずいっと詰め寄られて両手を前に出して旦那と距離をとる。

 

 

「ならいいけどよォ」

まだ疑うような目線を送ってくる旦那に、少し引きつった笑みを返す。

 

 

「反省してんのか?は、あんたもだろーが銀時ィ!!!」

どかああん!とスナックから人が出て来て、その人の足蹴が見事旦那にヒットした。

 

「がふっ、な、にすんだババア!」

「何じゃないだろうがァ!あんた、人の店の玄関に何してくれとんじゃああ!」

そう言って指差すのは、俺にぶち当たった、旦那の蹴り飛ばした玄関の戸。

 

 

「緊急事態だったんだから仕方ねぇだろうが!」

「あんたの緊急なんざ大した緊急じゃないね!溜まりに溜まった家賃と一緒に一気に返済してもらおーかァ…?」

「うげっ…そ、それとこれとは、話が違うだろうがァァ!」

 

 

 

どったんばったんと目の前で繰り広げられる乱闘にぽかーんとしていると、ぽんぽんと肩を叩かれた。

 

 

「ごめんなさい、何か…色々と

申し訳なさそうに言うさん。いや、もう何が悪かったのかもわかんないや。

 

「ううん、いいよ気にしないで。それより、今度は、さ」

「はい。今度は、銀ちゃんに見つからないように、門限までのお茶会しましょうね」

 

 

俺はぱたぱたと服の砂ほこりを落としながら二人で笑う。

こんなところを旦那に見られたら、また何か言われるだろうなあなんて思って、

繰り広げられる乱闘を横目に見ながら俺はこっそりとその場を抜け出した。

 

 

 

 

 

甘すぎる注意





(あー怖っ!副長も怖いけど、旦那も十分…さん絡みの時は、怖いなあ。さんへの注意はすごく甘いのに。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

山崎編。銀さんがどんどん駄目人間になっていっているお題3話目。

なかなか難しかったお題でした…!ベッタベタバカップルすぎて、注意とかしないと思うんですよね←

2009/08/30